joseph carey merrick.

幸せになりたいだけなのに

「もしもあなたが私をジョナサンと呼ぶのなら」

 

 

死ぬ夢をよく見る。

 

2月だったと思う。手術台に無影灯の光が降り注ぐと、私の身体には何本かのパイプが刺さっていて身動きが取れなかった。私は風船の中みたいだなあと思った。血は出ていなかったから余計にそう思ったのだけれど。やがて私の中から心臓を取り出した医者の顔は、どこかで見たことのあるような気がしたけど思い出せなかった。次に私の中に新しい機械を埋め込んだ看護師も、やっぱり顔に見覚えがあるような気がするのだがわからないままだった。最後に脳を取り出されそうになった私は、医師に向かって必死に懇願する。先生駄目ですか?残しておいてはもらえませんか?と、私が泣きながら言うのを医師が笑っていたのを覚えている。白い布に包まれた肉塊はぴくりとも動かないし口を聞いてはくれなかったけれど、何故かまだ人間の形を保っているように見えた。死んだ後であっても尚生きている時のかたちをしている事に凄く感動したりした。私はそうじゃなかったから。死ぬ直前、最後に聞いた言葉が「子供の頃、よく忘れ物をしましたか?」だったとはっきり覚えていて、そうだったと思います、と答えた。そうして私は灰になった。

 

目が覚めたら、カーテンの隙間から見える空が朝方なのか夕方なのか分からないような色をしていた。換気扇の下で煙草に火をつける。床に灰が落ちていくのを見ていた。